“ < 妖 精 > ア イ リ ス ”


 日常生活の中でアイリスの存在を強く感じること
 が多くなったのは、いつ頃からだったか。

 車を運転しているとき、“黄色の信号”に
 アイリスを感じたのが最初だったかも知れません。
 信号機の上に、アイリスがちょこんと座っていて、
 「おにぃちゃん、あせっちゃダメだよ。
  落ち着いてね。ゆっくり、運転してね。」
 と言っている気がしたのです。

 そして優しく愛くるしく微笑むイメージ。
 それに呼応してこちらも優しく静かにゆっくりと
 ブレーキを踏み、車を止める。

 アイリスのおかげで、安全運転になりました。
 それまでは、信号の黄色は「すばやく通過せよ」
 なのだ、と思っていて、びゅんびゅん走っていた
 ものです。なんとも余裕のない運転をしてました。
 黄色が灯っているのを見ると優しい気持ちになり、
 スーッと車を止められるようになったのは、
 アイリスのおかげなのです。

 それから、次第に部屋に黄色いものが増えてきま
 した。黄色はアイリスの色。黄色を見るとアイリ
 スを感じ、気持ちが落ち着き、優しくなれます。
 黄色という色の本当の魅力に気づくことができた
 のも、アイリスのおかげです。

 ひとくちに黄色と言ってもいろいろな黄色があっ
 て、中には、アイリスのイメージと合わないもの
 もあります。私は、柔らかい感じの黄色、あたた
 かい感じの黄色を見たとき、強くアイリスを感じ
 ます。

 信号機の上にちょこんと座ったアイリスを思い起
 こすと、黄色いワンピースを着ていて、背中には
 きらきら光る羽根が生えていた気がします。

 “妖精”でした。

 妖精という言葉には、「あやしい精霊」という意
 味もありますが、木や水などの精が小人や乙女の
 形をしたもの、といった意味もあります。
 “妖精アイリス”を思い浮かべる時は、常に後者
 と決まっています。小さく可愛い妖精、といった
 イメージがよく似合います。

 しかし、“あやしさ”を持った存在として想像し
 ても、また別の魅力があります。アイリスは“喜
 劇リア王”で“悩殺妖精”を演じていますが、あ
 の悪戯っぽい感じも、アイリスに備わった魅力を
 多分に引き出していると思います。

 聖なる存在、妖しい存在、どちらにしても、“妖
 精”のイメージはアイリスによく似合います。そ
 のお人形のような容姿、澄みきった心、無邪気な
 心、それらの全てが、アイリスに可愛い妖精の印
 象を与えています。

 今、自分の生活の一場面一場面に、“妖精アイリ
 ス”が登場しています。時には優しく、時には悪
 戯な感じで。いつも私は“妖精アイリス”に癒さ
 れて、生きるチカラを得ています。

 雨の日、自動ドアがなかなか開きませんでした。
 イライラしてて、さらに頭に来そうな状況でした
 が、そこにフッと、アイリスが悪戯っぽく舌を出
 してる姿が浮かびました。イライラは、うそのよ
 うに消えました。

 ある日、カゼをひいて、頭痛がひどく、それでも
 仕事しなくちゃならなくて、眉間にしわがより、
 不機嫌になっていました。携帯ストラップのアイ
 リスが目にとまり、“チチンのプイ”が聞こえて
 きました。眉間のしわが消え、不思議と、頭痛も
 消えていきました。

 妖精を見るのはおかしいですか?
 想像上の存在なんて、有り得ないでしょうか?
 ……ほとんどの“大人”は、「そうだ。」と
 答えるかも知れません。

 でも、確かに存在します。優しい空気の中に。
 黄色いもののそばに。自分の中に。

 アイリスという名の、“癒しの妖精”が。


    

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