花の帝都は銀座。人々に夢と希望を与える場所、大帝国劇場。

 このお話はそこで起こった出来事、かわいい天使のお話です・・・。
      
サクラ大戦 Side Story



2002年07月30日  文章:しすい  挿絵:じょや





 アイリス「らんらら〜ん♪」

  廊下をスキップしながらかけてゆく女の子。
  帝劇のかわいいアイドル、アイリスである。

 さくら 「あら、アイリス。ふふっ、なんだかご機嫌ね。」

 アイリス「あ、さくらー! うん、アイリスすっごくごきげんなんだー!」

 さくら 「へえー、何かいいことでもあったの?」

 アイリス「エヘ、えっとね、えっとね、もうすぐバレンタインデーでしょ!」

 さくら 「ええ、そうね。あと・・・1週間ね!」

 アイリス「うん!それでね、アイリス、お兄ちゃんに喜んでもらえるように、
      どんなチョコあげようかな〜って考えてたらね、なんだかすっごく
      うれしくなってきちゃったの!」

 さくら 「ふふふ、アイリスったら。でも・・・そうね、大神さんに喜んで
      欲しいって気持ち、すごくわかるなぁ・・・。」

 アイリス「!!」
      


  そう言ったさくらを見て、アイリスはわかってしまった。さくらもまた、大神一郎を深く慕っている。
  読心術をつかったわけではない、でも、アイリスにはわかるのだ。同じ気持ちを持つ者として・・・。

  大久保長安の事件後、大神一郎は帝国華撃団・総司令に着任。
  花組隊長であった頃とは比較にならないくらいに多忙な日々を送っている。
 
  そして総司令となることが決まった夜、大神一郎はアイリスと共に生きることを決意し、
  それはアイリスにも伝えられた。アイリスは嬉しかった、大好きなお兄ちゃんが自分を選んでくれたことに・・・。

  さくらが大神を慕っていることは以前からわかっていたこと、しかし
  今のアイリスにとってそれは、小さな不安を生み出すきっかけとなった。
      
 さくら 「ん?アイリス、どうしたの?」

 アイリス「え、あ、う、ううん、なんでもないよ!え、えっと、アイリス行くね!」 
   
 さくら 「あ、アイリス!」

  アイリスはその場にいたたまれなくなり、走りだした。
 
  (な、なに、この気持ち・・・、すごく、すごくいたいよ・・・)
  (お兄ちゃん・・・アイリス、こわいよぉ・・・)


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 そして、バレンタインデー当日・・・
      

 〜大帝国劇場・サロン〜

 さくら 「あの、最近アイリスに元気がないようにみえるんですが・・・」

 マリア 「そうね・・・、最近稽古にも身が入ってないようだし」

 カンナ 「思春期ってやつかもな・・・アタイにもそういう頃があったねぇ」

 すみれ 「あ〜ら、カンナさんの口から"思春期"という言葉が出てくるとは
      思いませんでしたわ〜」

 カンナ 「なんだと、すみれ。そりゃどういう意味だい!」

 すみれ 「そのままの意味ですわよ。お〜ほっほっほ!」

 カンナ 「んにゃろ〜、やるってのか!」

 マリア 「やめなさい、ふたりとも!今はそういうことをしてる場合じゃないでしょ!」

 織姫  「そうデース!アイリスのことがしんぱいデース!」

 紅蘭  「う〜ん、でもどないしたもんやろ。なんとか元気づけてあげたいんやけど・・・」

 レニ  「アイリスに元気がないと、ボクもつらい・・・」

 カンナ 「そうだな、アイリスの元気は、アタイたちの元気でもあるしな!」

 すみれ 「せめて、理由がわかればよろしいのですが・・・」

 大神  「やあ、みんな! ん・・・どうしたんだい、深刻な顔をして?」

 一同  「(大神さん、隊長、中尉、隊長ぉ、大神はん、中尉さーん、隊長・・・)!」

 大神  「ただいま、みんな!」

  ・
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 大神  「そうか、アイリスが・・・」

 さくら 「はい、なんとか元気づけてあげたいんですが・・・」

 大神  「うん、わかった。アイリスと話をしてみるよ!」

 さくら 「お願いします、大神さん」

 紅蘭  「そうや!唐突やけど、今日はバレンタインデーやな!」

 すみれ 「そうですわね〜、中尉、ちょっとお待ちになってて下さいな」

 さくら 「あ、あたしも用意してあるんです!今、持ってきますね」


  その場にいた隊員たち全員からバレンタインのプレゼントをもらう大神。
  先程までのの深刻な空気から一変、なごやかな雰囲気に包まれるサロン。
  そこに近づく足音・・・。

 アイリス(もうすぐお兄ちゃんが、帰ってくる!)

  今日、大神が帰ってくることを知っていたアイリスは、テラスでお出迎えをしようとしていた。
  不安な気持ちであることには変わりはなかったが、それ以上に大神が帰ってくることが嬉しかったのだ。

  そして・・・サロンの近くを通りかかった時、アイリスは大神が花組の皆からプレゼントを貰っている
  光景を目の当たりにした。 

 アイリス「あ・・・」

  普段なら何とも無かったであろうその光景・・・。しかし、アイリスの心の中には小さな不安があった。
  それは、その瞬間大きな不安となりアイリスを襲った・・・。
      
 アイリス「あ、アイリス、アイリス・・・」

 さくら 「ど、どうしたの、アイリス?」
  
 アイリス「っ!!」

  アイリスは弾かれるようにサロンから駆け出した。

 さくら 「あ!まって、アイリス」

 大神  「さくらくん、ここは俺にまかせてくれないかな?」

 さくら 「お、大神さん・・・はい・・わかりました、お願いします。」

 大神  「みんなも・・・ここで待っててくれ!」

 マリア 「わかりました、お願いします、隊長。」

 すみれ 「ここは私達の出番ではなさそうですわね。」

 紅蘭  「ここは大神はんにおまかせしますわ、がんばってや!」

 カンナ 「あたいらより隊長の方がいいかもな・・・たのむぜ!」

 織姫  「そうですネー!「つるのひとこえ」ともいいますし!」

 レニ  「アイリスを・・・元気にしてあげて・・・隊長、お願い!」

 大神  「わかった、いってくるよ!」
      

  大神は飛び出したアイリスの後を追った。行き先はだいたい見当がついていた。
  大帝国劇場の屋根裏部屋。アイリスは・・・そこにいた。
 
 大神  「アイリス・・・。」

 アイリス「ぐすっ・・・お・・・おにいちゃん・・・ひっく」

 大神  「どうしたんだい?」

 アイリス「・・・ぐすっ」

 アイリス「ア、アイリス・・・悪い子になっちゃった・・・」

 大神  「え?」

 アイリス「アイリスは・・・おにいちゃんが大好きなの・・・」

 アイリス「でも、みんなも・・・みんなもおにいちゃんのことが好きなの!」

 大神  「アイリス・・・」

 アイリス「それを思うと、嬉しいはずなのに、すごく胸が苦しくて・・・つらくて・・・」

 アイリス「それにね、みんながおにいちゃんと仲良くしているのを見るのがつらいの・・・」

 アイリス「すごくイヤな気持ちになって・・・」

 アイリス「アイリス、みんなのこと大好きなのに!なのに・・・イヤなの・・・」

 アイリス「おにいちゃんをとられちゃうって・・・不安になるの・・・」
      

 大神  「アイリス・・・・・・俺は、アイリスのことが好きだ!」

 アイリス「え・・・」

 大神  「俺は、アイリスをアイリスとして好きなんだ・・・他の誰よりもね。」

 アイリス「おにいちゃん・・・」

 大神  「勿論、花組のみんなも好きだよ、でも、アイリスへの気持ちとは違う。」

 大神  「アイリスといると、心が安らぐ。すごく満ち足りた気持ちになるんだ。」

 大神  「俺は、これから先も、アイリスと共に歩んでいきたいと思ってる。」

 大神  「だからアイリス、俺を信じてくれ。」

 アイリス「お、おにいちゃん・・・おにいちゃぁぁん!」

  せきをきったようにアイリスは大神に抱きつき、泣いた。
  そして、いままでの不安な気持ちは涙と共に流れていった。 

 大神  「アイリス、落ち着いたかい?」

 アイリス「・・・うん、もう大丈夫だよ、ありがとう、おにいちゃん。」

 アイリス「でも・・・みんなに迷惑をかけちゃったな・・・」

 大神  「あとで一緒にあやまりに行こう。みんな心配してたからね。」

 アイリス「うん、わかった。そうするよ、エヘヘ。・・・あっ、そうだ!」

 大神  「ん、なんだい?」

 アイリス「今日はバレンタインデーだったんだ・・・後でチョコあげるね!」

 大神  「ああ、そうだね、楽しみにしているよ。」
       

 アイリス「でもぉ・・・その前にもう一つプレゼントがあるんだぁ〜。」

 大神  「え、ほんとかい?うれしいなぁ、何をくれるのかな?」

 アイリス「えっと、えっと、えっと、目をつぶってくれる?」

 大神  「う、うん、こうかな?」

 アイリス(おにいちゃん、ありがとう。だ〜〜〜いすき!)

     (ちゅっ・・・)

 大神  「え、ええっ・・・あ、アイリス」

 アイリス「エヘヘ、これがプレゼントだよ! おにいちゃん!」

 大神  「・・・・・・(真っ赤)」

 アイリス「おにいちゃん、だ〜〜〜〜〜いすき!」

















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                        ☆ おしまい ☆

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