おしろの外に広がるまっしろな世界・・・
ちっちゃくて、まっしろな花びらがまう世界・・・
フランスにいたころ、雪を見ながらアイリスは思ってたの・・・
すごくキレイだけど、すごく冷たいんだなって・・・
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でもね、それはまちがいだって、わかったんだよ!
☆---------- サクラ大戦 Side Story ----------☆
〜アイリスの初雪〜
2003年03月09日 作者:しすい
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師走・・・帝都全体がどこか慌しく感じられるこの時期。
銀座に居を構える大帝国劇場、通称「帝劇」も例外ではなかった。
マリア「ふぅ、なんとか終わったわね・・・。」
雑巾を片手にマリアがつぶやく。今日は帝劇の大掃除ということで、花組全員で
劇場の掃除にあたっており、マリアは自分の担当を終えたところである。
カンナ「お〜いマリア〜、なんか手伝うことねぇか〜・・・って、
もう終わってるのか、さすがだねぇ」
マリア「ふふっ、さすがにちょっと疲れたわね。でも、こうして
自分達で劇場を掃除すると気持ちがいいわ。」
カンナ「へへっ、そうだな。いつもは従業員にまかせっきりだし
こうやって掃除するのもいいもんだよな。」
マリア「この帝劇は私達花組にとって、大切な場所ですものね。」
カンナ「うんうん、マリア、良いこと言うねぇ〜」
と、談笑する二人の元に駆け寄る人影・・・
アイリス「マリアにカンナ、おつかれさまー!あったか〜い飲み物、
もってきたよー。」
アイリスは満面の笑顔で、マリアとカンナにいれたての紅茶を渡す。
カンナ「お、気が利くじゃねぇか〜、アイリス。」
マリア「ありがとう、アイリス。楽屋の掃除はもう終わったの?」
アイリス「うんっ、もうピッカピカにきれいになったんだから〜!
それでね、おそうじもおわったしぃ・・・えっと・・・
これから中庭で、「ゆきがっせん」しない?」
帝都では昨日から、今季初の雪が降りしきっており、今日の朝になる頃には、
見渡す限り白銀の世界へと変えていた。アイリスは今日の掃除が終わったら、
みんなと雪合戦をしたいと思っていたのである。
マリア「ごめんなさい・・・。まだ自室の掃除が残っているの。」
カンナ「あちゃ〜、アタイもこれから浅草に用事があるんだよ。
わりぃな、アイリス。」
アイリス「そっか・・・うん、わかったよ!しょうがないもんね。
それじゃ、アイリスみんなの所に行くね。バイバーイ。」
少しだけ悲しげな表情を見せたが、すぐに笑顔に戻り、他の花組の元へと
駆けていくアイリス。
マリア「あ、アイリス!」
カンナ「まあ、しょうがねぇ・・・よな。」
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〜大道具部屋〜
さくら「ごめんなさいアイリス。ここの掃除に手間取っちゃって
もう少し掛かりそうなのよ・・・。」
すみれ「まったく・・・さくらさんが“ねずみ”に必要以上に
驚くものですから、こうなったんじゃありませんか。」
さくら「う・・・。でも、すみれさんだって同じだったじゃない
ですか!モップを長刀みたいにして、それで大道具部屋
がめちゃくちゃに・・・」
アイリス「うん、わかった。あの・・・アイリス何かてつだうよ!
そうすればすぐに終わるよね!」
さくら「だいじょうぶよアイリス。その気持ちだけで嬉しいわ。
アイリスも楽屋の掃除を頑張ったんだから、あたしも
頑張らなくっちゃ!」
アイリス「うん・・・じゃあアイリス行くね。」
〜音楽室〜
織姫「これから次回公演の稽古をしようと思っていたデ〜ス!
だから、雪合戦はできまセンね。ごめんなさいデス。」
レニ「ボクと織姫のシーン、すごく大切な場面なんだ。だから
少しでも良いものにしたいと思っている。あ、でも少し
くらいなら・・・ね、織姫。」
織姫「そうデスね〜・・・。」
アイリス「う、ううん、だいじょうぶだよ!おけいこの方が大切
だもん。エヘヘ・・・がんばってね、ありがと、レニ。」
レニ「アイリス・・・。」
〜地下格納庫〜
紅蘭「う〜ん・・・やりたいのはやまやまなんやけど・・・
ちょ〜っと今、光武の整備で手一杯なんや、堪忍やで。」
アイリス「うん、アイリスこそ、おしごとのジャマしてごめんね。
それじゃ、こうらん、がんばってね・・・」
紅蘭「おおきに。また今度、一緒に遊ぼな!って、もう行って
もうたか・・・アイリス、なんや元気なかったな・・・」
〜大神の部屋〜
大神「ごめんよ、アイリス。これから米田支配人と出かけなく
ちゃいけなくて・・・。」
アイリス「うん、わかった・・・。」
大神「ん、どうしたんだい?何だか元気がないけど・・・」
アイリス「な、なんでもないよぉ!エ、エヘヘ、いってらっしゃい、
おにいちゃん!気をつけておでかけしてね。」
〜大帝国劇場中庭〜
アイリスは一人で中庭に来ていた。
じっと雪を見つめているその目は、遠い過去を映し出していた・・・。
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〜フランス・シャンパーニュ地方 ソローニュ城内〜
アイリス「わーっ、キレイー!パパ、ママ、すっごくキレイだよ!」
ロベール「おお、雪か・・・どおりで昨晩は冷えたわけだ。」
マルグリッド「ふふ、アイリスったらあんなにはしゃいじゃって。」
窓の外に広がる雪景色に歓喜するアイリスを見て、両親のロベールと
マルグリッドは微笑まずにはいられなかった。二人はアイリスに対し
深い愛情を抱いていた。しかし、その深さ故にアイリスを外の世界に
出すことを恐れていた。すさまじい霊力を持つアイリスを・・・。
アイリス「ねぇねぇ、アイリス、おそとであそびたーい!ねぇねぇ、
おでかけしよーよ!いいでしょー?」
ロベール「アイリス、外は雪が降っているから、とても寒いんだよ。
今日はお城の中で遊んでいなさい。いいね、アイリス。」
アイリス「えーっ!やだよぅ、アイリス、おそとにいきたーいっ!」
マルグリッド「お願い、今日は中であそびましょうね。それに・・・
アイリスが風邪でもひいたら心配ですもの。」
アイリス「・・・うん、わかった。」
アイリスは両親の表情を見て外に出ることをあきらめた。アイリスは
両親が困っている事に気がついたから、これ以上の要求はしなかったのだ。
アイリスはもう一度、窓の外の景色を眺めた。窓ガラスについた手に、
外に降りしきる雪の冷たさを感じた・・・。
アイリス(雪って・・・すごくつめたい・・・)
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アイリス「エヘヘ、つめたい・・・ね」
中庭に一人佇むアイリスは雪に触れ、記憶にある思い出と重ねていた。
寂しさと雪の冷たさ・・・それはアイリスの胸を締め付けた。
アイリス「おへやに・・・もどろうかな。」
部屋に戻ろうとしたアイリスが振りかえるとそこには・・・
アイリス「あ・・・」
大神「さあ、アイリス。雪合戦を始めようか!」
さくら「ふふふ、大神さんったら張り切ってますね。あたしも
なんだかワクワクしてきました!」
すみれ「たまには庶民の遊びを経験するのもいいですわね〜。」
カンナ「アタイの故郷は沖縄だからさ、正直、雪合戦ってやった事
ねえんだよな。なあアイリス、教えてくれよ。」
紅蘭「ふっふっふっ、雪合戦はウチがおらんと始まらんでー!」
織姫「稽古もいいデスけど、たまには息抜きも必要デ〜ス!」
レニ「アイリス、雪合戦、やろう!」
マリア「張り切るのもいいけど、ケガをしないよう気をつけてね。」
アイリス「みんな・・・どうして?」
大神「どうしてだろう・・・ただ、みんな同じ想いであることは
確かだと思うよ。さあ、はじめよう、アイリス!」
アイリス「おにいちゃん・・・うんっ!」
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そして、花組全員での雪合戦が始まった。
さくら「行きますよー・・・てりゃっ!」
シュッ・・・バシッ!
すみれ「ひぇぇぇぇぇ、さ、さくらさん、やりましたわねぇ!」
カンナ「へへへ、そんなとこにボケーっと突っ立ってんのが
悪いんだ・・・よっと!」
シュッ・・・バシッ!
カンナ「あ、やべ!マリアに当たっちまったい・・・」
マリア「ふふふ、やってくれるわね、カンナ。・・・そこっ!」
シュッ・・・バシッ!
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紅蘭「いっくで〜!「ゆきだま君1号」、うてぇ〜〜!」
シュバババババ!
織姫「ちょ、ちょっと紅蘭、そ、それは反則デース!」
レニ「大丈夫、弱点を狙えば勝機はあるよ。目標補足・・・
そこだっ!」
シュッ・・・バシッ!
大神「いってー!やったなレニ・・・それっ!」
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アイリス(みんな、ありがとう。アイリス、すっごくうれしいよ。
アイリスね、いま、わかったよ。雪って本当はすごく
あったかいんだね。だって、みんなで笑顔になれるん
だもん。しあわせを感じることができるんだもん。)
シュッ・・・バシッ!
アイリス「きゃっ、つめたーい!」
さくら「ふふふ、アイリス、ボーッとしてちゃダメでしょっ!」
アイリス(アイリス、おにいちゃんやみんなに会えて、ほんと〜に
よかった。みんな、だ〜い好きだよ!)
アイリス「やったなぁー!・・・おかえしだよぉ、いっけぇー!」
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☆ おしまい ☆
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