バレンタインSS【秘密】の 裏SS
【 秘 め 事 】
文章: 鷹 月 孔 様
絵: じょや
「ひみつだよ」
「秘密だね…」
囁きあう、金と銀の小鳥。
乱雑に置かれた荷物の隙間に、屋根裏の窓が、
形そのままの陽だまりをつくっている。
直線と曲線に切り取られたひなた。
それはまるで光と影で出来た魔方陣のようで、
金の小鳥の想像力をくすぐった。
そこだけが日常から切り離された光の空間のようで、
銀の小鳥は気に入っていた。
誰も知らない秘密の場所。
晴れた日の、ほんの僅かな時間だけ現れる、二人だけの秘密の空間。
並んで座れば、隙間すら無くなる空間に、クスクスと潜めた笑いが漏れる
誰にも見つからないように、寄り添う。
誰にも聞かれないように、声を潜める。
「レニ、だれにもナイショだよ?」
「二人だけの秘密だね…アイリス」
真剣に、
でも、どこか悪戯めいて、金と銀の小鳥は囁く。
金の小鳥は、ミントグリーンのエプロンドレスのポケットから、
チョコチップクッキーを出して、二つに割って二人で食べる。
「おいしいねっ」
「うん…」
銀の小鳥は、ブルーのジャケットからウイスキーボンボンを
一つ出して口に含んで……分け合った。
「んっ……あまぁい」
「…秘密の味がする……」
見つめ合って、秘密めいた微笑を交しあう。
コツンと額をあわせ、寄り添う。
キラキラと日の光に透ける、ビー玉のようなキャンディー。
真っ白な雲を、小さくちぎってあるかのようなマシュマロ。
みんなにナイショでこっそり食べる。
秘密の話。
二人だけのナイショの話。
ふれあって、
だきあって、
密やかに話す。
だぁれもしらない、コットンキャンディーの様な甘い語らい。
知ってはいけない、ビターチョコレートの様な秘密の語らい。
金の小鳥は、銀の小鳥の耳元に唇を寄せる。
「ひみつだよ……」
銀の小鳥も、金の小鳥の耳元に唇を寄せた。
「秘密だね……」
澄んだ鈴の音の様な金と銀の小鳥のさえずりは、
互いの耳をくすぐり、淡く光の中に溶けて消える。
楽しい時間はすぐ過ぎる。
いじわるな雲が太陽を隠す。
秘密の場所は、もう消える。
小鳥達は、そっと飛び立つ。
ナイショの時間も、もうおわり。
軽やかに階下へ、降りる。
「二人とも、何処に行ってたんだい?」
青年が尋ねる。
「ナイショだよっ」
金の小鳥が、軽やかに跳ねるように、
日の光の様な笑顔に、艶やかな何かを僅かに含めて答えた。
「……内緒」
銀の小鳥が、静かに淡く、
月光の様な微笑に、謎めいた何かを僅かに含めて答えた。
少女達は、翼の下に秘密を持っている……。
青少年よ、
乙女の秘密を暴いてはいけない。
秘め事は、
秘するからこそ、華なのだから……。
・・・Fin
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あとがきめいた言い訳…
スィート・バージョン【秘密】の改訂版である、
ドキドキ・バージョン【秘め事】です。
改訂版なので、基本的はストーリーも文章も変わりませんが、
ちょこちょこと書き足してあります。
こっちが本来書きたかったほうかもしれないですっ(爆)
トコトン、アイリスとレニをイチャイチャさせたかったんですっ。
この二人が仲良しだと、それだけで幸せなんですが、
妄想が暴走して、色んなコト書いちゃうんですっ。
だからちょっと…ドキドキなシーンがあったりするんですが…
女の子同士の戯れですから、深く考えないでくださいねっ。
まぁ…ほらっ、ねっ、な、なんかこの二人だと綺麗な感じが
するのでいいかなぁ…とかって言い訳をしてみたり(汗)
…それが何処のシーンか、探してはダメです。
気が付かなかったのなら、そのままに…。
謎は、謎のままの方が粋。
秘密は、秘するからこそ花なのですから…。
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