金色の妖精・銀色の精霊


                              鷹月 孔 様







深夜

月は引き絞った弓の如く真円を描き

         世界を、青銀の光で満たす・・・・

人は夢を見ている時間。

      夢魔は勤めを果たす時間。

           獏は食欲を満たす時間

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レニの目の前を妖精がひらひらと舞う。

肩までの金髪をなびかせ、

背に生えた薄いく七色に輝く4枚羽根を時折パタパタと動かしながら、

広げた手の平ほどの大きさの妖精が舞う。

金色の淡い光を放ちながら、レニに纏わり付いた。

「・・・アイリス?」

レニが呼びかけると、アイリスそっくりの妖精は嬉しそうに舞った。

くるくる・・・・

     ひらひら・・・・

石造りの重厚な壁。

広く大きな壁一面の・・・鉄線入りの硝子窓。

豪奢なベットに、沢山のヌイグルミ。

深遠の淵の様な、

   深海の底の様な、

       深い闇の様な

静寂の・・・空間。

    きらきらと、光の妖精が舞う。

空間に、たった一つの光・・・・

孤独な一人舞台。


       それは牢獄の様な孤独の記憶。

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アイリスの横に精霊が佇む。

何も言わず、ただ静かに・・・銀髪の精霊が淡く青い瞳を虚空に向ける。

肩に届かぬ銀色の髪を、びくりとも動かさず・・・どちらの性とも判らぬ面差しを傾け・・・

手の平ほどの大きさの精霊が、ただそっと寄り添う。

「レニ・・・?」

アイリスの呼びかけに、レニそっくりな銀色の精霊は淡く微笑みを返す。

虚空を見つめる瞳は・・・

         何を映すのか・・・

無機質な白い壁。

格子のはまった小さな窓。

味気無いスチールの扉・・・

クレパスの底の様な

   白濁した澱の様な

      血色の闇の様な

苦痛の・・・空間・・・

精霊は佇む・・・

   一人、ただ虚空を見詰める。

悲しみと孤独を瞳の奥に沈殿させて・・・・


   それは無自覚だった悲哀の記憶。

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レニは金色の妖精を、そっと手の平で包み込んだ。

アイリスは銀色の精霊を、そっと胸に抱いた。

「アイリス・・・・・・」
「レニぃ・・・・・・・」

「「寂しくなんかないよ・・・」」

「ボクが居るから・・・皆が居るから・・・」
「アイリスがいるから・・・みんながいるから・・・」

「「今はもう、一人じゃないから・・・・」」

レニの手の平の中で、金色の妖精が初夏の日差しの様な笑みを返した。。
アイリスの腕の中で、銀色の精霊が月光の様に微笑を返した。
      
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朝日が昇る。

柔らかな日差しが中庭を満たし始める。

小鳥が囀り、

      朝露が葉を濡らしキラキラと光を散らす。

今だ妖精と精霊はまどろみの中。

朝日の差し込むアイリスの部屋で、二人仲良く寝息をたてる。

しっかりと手を繋ぎ、

          二人はそれぞれ夢を見た。

ぬくぬくと同じ布団に包まり。

        二人、同じ寝言を呟く。

「・・・君はボクの大事な・・・」
「・・・レニはアイリスの大切な・・・」

「「お友達・・・」」









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独白の様なあとがき

たった二日で一気に書き上げた、突発SSです。
何となく、昔自分で書いたオエビ用の『ねむねむレニアイ』絵を見ていて
ふと思いついた言葉をつらつら書いてみました。
二人とも、幼少の頃の境遇は違えども、
心に抱えていた『闇と孤独』は同種の物に思えて・・・
でも・・・
同じ場所で癒されて、同じ場所で『幸せ』を得て、
みんなとの絆を紡いだ様に感じていました。
そして、ふと・・・こんなSSを書いてみました。
いかがものでしょうか?
      

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