12   ミ チ ル


劇中劇『新・青い鳥』は、例えば『新西遊記』なんかと比べると、時間的には短いものでした。
しかし、非常に濃密でした。音と声の出る綺麗な絵本。素晴らしい劇中劇だったと思います。
一貫したメルヘンの雰囲気、次々に移り変わりながら、歌とともに表現される場面。

それに、今回のショウは『青い鳥』で始まりました。
ですから最初から最後まで『青い鳥』の物語が全体を貫いている感が強かったのです。
第1幕も「アイリスが主役」の物語だったし、劇中劇でも「ミチル」として中心にいる。
私にとっては言うことなしに大満足。

そしてそれ以上に心を満たしてくれたのがアイリス=ミチルの演技です。
それは、はじける笑顔であったり、不安そうな表情であったり、可愛い仕草であったり。
私の文章で表現しようとすると、どうしても限界の壁にぶち当たります。
あの可愛らしさ、素晴らしい輝きを伝えるには……。

     

……というわけで絵を増やしてみましたが……

観てください。観るしかないのです、本当にアイリス=ミチルの素晴らしさを知るには。
もう舞台は終わってしまいましたから、DVDで観るしかありません。
DVDは生の舞台の感激には及びませんが、それでもあのミチルの姿をずっと観ることができる。宝です。


ひとり、恐れずに暗闇の中へ青い鳥を探しに行き、帰ってきたミチル。
不安そうなチルチルに、後ろから「…おにぃちゃんっ」と声をかける。
(あの呼び方の響き。嬉しそうで柔らかくて、めっちゃジューシーで可愛らしくて
 アイリスがこれまでに言ってきた「おにいちゃんっ」の中でも特にすごかった。)

…ところがその青い鳥は「死んでる」。周囲から声が響く。「青い鳥は偽物だ。」
チルチルにか細い声で謝りながら、スゥッ…と魂が抜けたように力を失って倒れるミチル。
(ミチルにとってみれば深刻な事態ですからこんなこと言うのは不謹慎かもですが…
                      あの倒れ方、非常に美しかったです。)

全身で、全ての心と魂かけて嘆き叫ぶチルチル。レニの迫真の演技。
泣き声まじりの「…ぼくはもっと、きみをあいしたいんだっ…」…真に迫っていました。

 

「命の水」によって、少しずつ眼を開け、意識を取り戻すミチル。
まるで眠りから覚めたように、夢からゆっくりと抜け出したかのように…

    

青い鳥と戯れるミチル。後ろにステップしたり、首を傾げてみたり。
さくら=青い鳥の歌の中で入る、ミチルの可愛い笑い声が耳にいつまでも…心地よく残っています。


そして舞台裏。チルチルとミチルが、レニとアイリスに戻った瞬間。
これは珍しいシーンでした。
レニの涙を拭いてあげるアイリス。(千秋楽ではアイリス自身も泣いていた…)
ここでアイリスは「みんなの幸せ」を願う…そう口にする。
それが「見失っていたこと」なのではないか?と。
ひたすら純粋に、世界のみんなの笑顔を守り、幸せを広げたいと願うアイリス。最高に輝いています。

さあ、最後のシーンへ。「仲良しのきょうだいになろう、」とレニ。
笑顔でうなずくアイリス。…あ、また、レニのいたずらにひっかかっちゃうかな?
…と思った瞬間、今度はレニの手をかわして、レニにがばっと抱きつきました。

              

「やられた…」とレニ。…こちらもある意味「やられた」。可愛すぎる。可愛すぎる2人の様子です。
こりゃー…とろけますよ…観ていて。

そして最後。『希望』の熱唱。              

ミチルが ♪「この〜ばしょ〜に生〜きぃて…」 と、歌う時…
…あの、すごく気持ちを込めまくって、全身全霊で歌っている様子…
これを聞いた瞬間、体の中を、ぞくぞくっ! と何かが走りました。
とてつもない感動でした。気持ちが直に伝わってきました。
ミチルの中に満ちあふれた温かいエネルギーが飛び出して、舞台を、客席全体をも満たしたと感じました。
そして私のなかでも、本当に素晴らしいもの…「幸せ」が満ちていきました。

幸せミチル舞台。それが『新・青い鳥』。

ここにいつも幸せがあります。ここから全てが、未来が始まります。
私の心の一番奥に、この舞台があって、ミチルがいて…
歌い、踊り、笑顔を見せて、いつでも幸せで満たしてくれます。

ミチルは見つけたんだ。ほんとうの幸せの青い鳥を。
アイリスは見つけたんだ。仲間とのかかわりの中で、かけがえのないものを。
それを自分の中にしまっておかないで、こちらへ投げかけてくれる。こちらをも満たしてくれる。

この上なく満ち足りて、私は観劇を終えました。
優しい幸せと、深い感謝の気持ち… 「希望」で、満ちていました。


               〔  了  〕  2006 3 15  …… 2005年の夏を思い出し、記す。

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