ことのは華劇壇<舞台裏>9 帝劇にて







 あら・・・アイリス。図書室で会うのは珍しいですわね。何を読んでらっしゃるの?

 あ、すみれ! んとね、「りげんしゅ〜らん」だよっ。こないだ、すみれに教えてもらった本。

 俚言集覧ですの? まぁまぁまぁ、勉強熱心ですわね!
 それも、わたくしのお教えした本で勉強するなんて、感心ですわねぇ〜。おっほっほっほ・・・

 カンナはね、「アイリスはよ、質問する役なんだから何も知らなくたっていいんじゃねーか」
 って言うんだけど、やっぱりね、アイリスも勉強してた方がいいかなって。

 質問する役? ああ、ラヂヲですのね。
 全くその通りですわね、カンナさんのおっしゃることは、ぜんっっっっぜん当てになさらなくて結構ですわ。

 カンナはアイリスのこと心配して言ってくれてるの。
 でもね、アイリス、ことばを調べるの楽しくなっちゃって! 番組のためじゃなくてシュミになってきてるんだ。

 それは、すばらしいことですわ。
 ・・・まれにみる速さで日本語をマスターしたあなたのことですから、きっとゆくゆくは言葉博士になれましてよ。 
 それで、今は何をお調べになっていますの?

 それが困っちゃってるの。こんど読む予定のおたよりが「てんやわんや」についての質問で・・・
 それで、「てんやわんや」を探してたんだけど、そのページがね、無いの。

 ええっ? ・・・あら、本当ですわね・・・破られたようになってますわ。だれがこんなことを・・・

 本をわざとやぶっちゃうような人、ここにはいないよね・・・?

 そう信じたいですわね・・・。 ・・・いえ、やはり、そんな人はいない、と断言できますわ。

 うん、そうだよね! アイリスも「だんげん」する!

 ええ。これは、きっと何か・・・別の理由がありますわね。

 ねね、すみれ、「てんやわんや」って、どうしてそう言うのか知ってる?

 さあ・・・いかにわたくしでも全ての言葉の語源までは・・・。
 あ、でも、「てんや」という部分は、「てんでん」から来たのだと思いますわ。

 てんでん?

 いいですこと? それは・・・ ・・・ん?

 

 曲者ッ!

 おわっと! や、やべ・・・

 カンナ!?

 お、おーう。なんだ、2人で図書室で何してるんだ? だ、台本読みか?

 カンナさん・・・何をコソコソしてらっしゃいますの?

 な、なぁに言ってんだヨお前・・・あたいがいつコソコソした? あたいがコソコソしたって似合わねぇだろ、ん?

 あやしいですわね・・・

 カンナ、大人になったんだね! アイリスは嬉しいよぉ〜。

 ん、ん?

 だってカンナ、いつもなら、すみれに扇子投げられたりしたらすぐ怒ってケンカになるもん。我慢してて偉いね!

 ん、あ、あぁ〜、まぁな!! あたいも成長してるんだよ、人間的にな。ははは・・・

 ・・・カンナ。隠していることを言いなさい。

 おわあぁあぁあっ!! マリア!? ・・・そんな、いきなり後ろにっ・・・もう、いけずぅ・・・

 ・・・言いなさい。

 うッ・・・(--; ・・・えええと・・・じ、実は・・・ アイリスの持ってる・・・その本のページ・・・

 えっ?

 その本をこう・・・マクラにしてよ、気持ち良く寝てたらさ、・・・
 寝てる間に寝ぼけたらしくて・・・そ、その・・・ページを破って・・・鼻をこう・・・チーン、と・・・

 な、なんということを・・・

 カンナ・・・!

 ワアァッ!! マ、マリアさんっ!? そ、そんな、銃口を向けちゃイヤン!!
 少々時間をください、なにとぞ・・・なにとぞっ・・・お許し下さいっ・・・

 ・・・問答無用よ。

 ひえぇえぇえッ!! たーすーけーてー!!

 あっ! 待ちなさい!!

 うまく逃げましたわね! マリアさん、追いましょう!
 わたくしは1階から回りますので挟み打ちに!

 了解よ!


 ・・・・・・。

 ・・・行っちゃった・・・。 ・・・ま、いっか! エヘヘ☆

 




 
      【次回の“ことのは華劇壇”放送をお楽しみに。】


      

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