[ 第 12 回 ]    “  てるてるぼうず  ”


 参!  弐ぃ!  壱!
どっか〜〜〜ん!!

 こっとのは・かぁげきだ〜〜〜〜ん!!

                             ちゃっちゃかちゃっちゃっちゃ〜ん♪

 わ〜い! みんな元気だった? 帝国歌劇団、アイリスだよ〜っ!
 同じく李紅蘭です〜。みなはん、ごきげんよろしゅ〜。
 えっとね、今日ね、織姫はカゼひいちゃってお休みなの。
 織姫はんを待っとったみなはん、すんまへんな〜。今回だけうちで我慢してや。
 ほんとはゲストのはずだったんだよね。でもアイリスひとりになんなくて良かったぁ……
 うちがおらんでもジャンポールがおるやんか。あ、タイトル言ってええ?
      言葉の謎解き“ことのは華劇壇”、第12回始まり始まりやで〜っ!
 だってジャンポールの声はね、ラヂヲの前のみんなには聞こえないもん。
      ジャンポールもみんなと同じようにお話できたらいいなぁ。
 ふむふむ……ほな、思い切って3日ほど、うちにあずけてみぃひん……?☆
 え! ……そ、それは……だめっ……
 冗談や、冗談。
 本気の目をしてるよぅ……
 ところでアイリス、今日のおたよりは?
 あ、そうだ! えっと、……あれっ? どこ〜?
 はい。これ……。
 あっ、ありがと〜! じゃっ、読むね!
 うん。
 って、レニ! いつのまにっ!?
 今。
 レニも来てくれたんだぁ!
 なんや、最初からおったらタイトルを叫ばせたかったなぁ……。
      まぁええわ、ほなアイリス、レニにそれ読んでもらお?
 うんっ。はいっ、レニ。おたより読んでみて!
 え、う、うん。……じゃ、読む。
      「 てるてるぼうずは、どうして “ ぼうず ” なのですか。 匿名希望。 」
 みじかっ! なんともレニに読んでもらうために来たようなおたよりやな。
      匿名希望はん、タイミングええで〜。
 匿名希望さん、ありがと〜!
      それじゃ、さっそく言葉博士に聞いてみます! レニ先生、教えてくださいっ。
 てるてるぼうず。天候が良くなるよう祈りをこめて軒などにつるす人形。
      江戸時代に今のような形になったという説が有力。天候を司るのが
      僧侶や修験者だったことから、「ぼうず」と呼ばれたと考えられる。
 そぉなんだぁ〜!
 さすがレニ、生き字引やな。ほな、「てるてる」は晴れるように祈るっちゅう意味やな?
 たぶん。 「てれてれ法師」とか「日和坊主」という別名もあるらしい。
 お坊さんの人形が祈るから晴れるんだね。
      親方みたいに頭がピカピカだから晴れるのかと思っちゃった!
 それもあながち間違いではないんちゃう?
 ねぇ、さかさにつるすと雨が降るの?
 なんやそんな伝説もあるようやな。あとはあれや、頭を黒くすると雨乞いになるそうやで。
 頭って、どこからどこまで? 頭のてっぺんだったら、髪の毛みたいだねっ。
      アイリス、髪の毛は描いたことないなぁ。描いたら雨が降るのかな?
 黒い布で作るて聞いたことあるで。頭…いや身体も全部かいなぁ?
      でも黒い布やったら顔も描けへんなぁ。作ったことあらへんしわからんわ。
      逆にラヂヲの前のみなはん、知ってたら教えてや。
 普通の白いのも昔は顔を描かなくて、のっぺらぼうだった。
      願いが叶って晴れたら、目や鼻を描いて祀ったり、川に流したりした。
 えっ、川に流しちゃうのっ?
 う、うん。……人の形をしたものを身代わりとして流す文化がある……
 そーやな。けがれや災いをのっけて流してしまうとか、そういうことやろ。
      酒とか塩で清めて流したり、な。おまじないのひとつやな。きっと。
      そういう文化と通じてるんやないか? てるてるぼうずも。
      …にしても、つるされたり流されたり、結構、散々な目におうてるな?
 願いを叶えるため、または神の怒りを鎮めるための生け贄。
      ……ずっと昔からあった習慣。でも本当の人間は生け贄にしたくない。
 じゃあ、その身代わりなんだ……。
 まぁ感謝の意味をこめてそうするようになったんかも知れんし、それに、
      別に必ずそうせなあかんってことはないやろ。物にも魂はある。
      用が済んだ後どういうふうにしても、そこに作った人の愛情があれば
      ええんちゃうかな。逆に愛情がなければ何をしても悲しいだけや。
 でも……形代にするために作ったのに、あまり愛情を注ぐのは危険じゃないかな。
      だったら……作らないほうがいい。
 う〜〜ん、確かにな……なにやら、意外と深い話になってきたな。
 ……てるてるぼうず、てるぼうず〜♪  ……アイリス、最後のほう、きらい……
 最後の方……? ああ、晴れんかったら、くびちょんぱするで〜ってやつやな。
 最初の方は、晴れたら鈴や酒をあげると歌っている。
      もし、空がくもって泣いていたら首を……というのは、
      それだけ強い思いを伝えたいということかも知れない。
 脅しやな。うちは、願いが叶わんでも泣いてたらあかんで〜っ、
      気合やで〜、って意味もあるんかな〜と……。思ったんやけど。
      でもやっぱり、泣くいうんは雨のことやろなぁ。
 泣いたら、首ちょんぱされちゃうの?
 い〜や、泣きたい時は思いっきり泣けばいいんや。誰もそれを止める権利はないで。
      誰かが泣いてたら一緒に泣こうやないか。空が泣いてるならみんなで泣けばええ。
 そっか!
 雨の時、空が泣いてるとは限らない…… ね、アイリス。
 うん! アイリスね、晴れも好きだけど、雨も好き。いっぱい降ってる時の音とか!
 それ、前も言ってたなぁ。どんな音に聞こえるん? 教えて〜な。
 舞台の……あの音だよ。
 えへへ、あとはナイショ! あ、ねぇ紅蘭、それより、中国のてるてるぼうず、教えて!
 ああ、そういや教える約束やったなぁ。でもまさかラヂヲで言うとは思わんかったで。
      このおたより、タイミング良すぎやな〜。
      さて、じゃあ教えたる。中国に残る、伝説や。

      むか〜しむかし。北京に晴娘(チンニャン)という美しい娘がいたんや。
      手先が器用で、晴娘の切り紙と言えば皇宮の后妃や公主達も買い求めるほどやった。
      さてある時、北京にすさまじい大雨が続き、水が溢れて大変なことになった。
      どう祈願しても天には通じへん。ところが、晴娘が天に向かって祈ったところ、
      天から声がした。「東海龍王がお前を太子の妃にしたいと言っている。従え、
      従わねば北京を水没させる!」とな。理不尽な神さんもあったもんやな〜。
      ……そして晴娘は自らを犠牲にしても北京を守る道を選んだ。妃になります、
      言うたら、途端に大風にさらわれ、それっきりや。雨はすっかり止み人々は救われた。
      それ以来、雨が続くと、人々は晴娘をしのんで娘の形の切り紙を作り、門に掛ける。
      これを『掛掃晴娘(グアサオチンニャン)』と呼ぶようになった……おしまい。
 雨雲を掃き、晴れの気を引き寄せるため、ほうきを持っている。
      この紙人形の風習が日本に伝わったのは平安時代か、もっと前かも知れない。
      それが、だんだん、日本で「てるてるぼうず」になっていった。
 もともとは女の子やったのに、日本で男の子になったんやねぇ。
      まぁ、中国では次第にこの風習は無くなってきつつあるようや。
 ねっ、ちんにゃんさんどうなっちゃったの? いじめられてない?
 うーん、まぁこっちは望まん結婚だったんやけど、あっちは望んだんやから、
      大切に扱ってくれたんちゃうかな〜? なにしろ龍王の御殿やし、暮らしは
      不自由せんかったやろ。でも親しい人達と無理矢理引き離されたんは悲劇やな。
 かわいそう……
 アイリス……。
 うちらが覚えておいてあげようや、な? みんなのために自分をなげうった、
      勇敢で、優しい晴娘のことを。晴れた空を見たとき、そこに彼女の笑顔があるんや。
 うん……わかった。
 それにしても、雨が降れば晴れを望む。晴れが続けば雨乞いをする。
      人間ちゅうんは、いつの時代も祈りが天に通じると信じてるもんやね。
 うん。ほんとの神様はね、イケニエなんかいらないって言うと思うの。
      アイリスたちを優しく、見守ってくれてるはずだもん……
 そうだね……。
 せやな、とにかく大事なんは優しさやな。人間もそうや。願いが叶わんからって
      何かに怒りをぶつけるんは間違うとります。せやから、たとえ効き目のなかった
      「てるてるぼうず」でも、こっちのワガママにしばらくつきあってくれてサンキュ
      やで〜って気持ちを持たんとな!
      ……そろそろ時間やな。うまくまとまったかな? ほな、さいなら〜。
 さよなら。
 みんな、またね! ばいば〜い!



★ 次回予告?(帝劇にて)★

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